下に見るように、ワ行の「を」には若さ、若い人を言う語が集まり、ア行の「お」には反対に老いた人を言う語が集まっている。
を(若):をぐな童男、をぢ叔父、をつ変若(若くなる)、をとこ男子、をとめ少女、をば叔母、をひと夫、をみな女、
お(老):おきな翁、おぢ伯父、おとな大人、おば伯母、おひと/おびと首人、おみな媼、おゆ老
因みにワ行拍「わ、ゐ、wu、ゑ、を」には”若さと若さゆえの愚行”を言う語が集まっている。
わか若(わかし若)
わく(湧*若;わくこ若子)
わけ(戯奴)
わさ/わせ(若*早*早稲)
wuか(wuかwuか-wuっかり)
wuこ/をこ愚(烏滸)
wuそ/をそ(wuそ鷽/をそ軽率)
をけ/をこ烏滸*尾籠(をけざる烏滸猿)
をこ烏滸*尾籠/wuこ(をこのさた烏滸沙汰)、をこつ怠-をこたる
古事記「我が心しぞいや袁許にして今ぞ悔しき」(中・歌謡)
日葡辞書「Voconomono (ヲコノモノ)〈訳〉ならずもの」
をさ(をさなし幼)
をそ(獺*軽率;おほをそとり大軽率鳥*大鷽鳥、をそをそ、をそろ)
をつ(変若;をちかへる若返、をちみづ変若水)
これに対してア行語には「老」を言う語がワ行語におけるほど見当たらない。せいぜい”多い”ことを言う「あは/さは」くらいである。
上に見るように「お」と「を」が老若の対照をなしていることには神秘の感に打たれる。自然言語にしてどうしてこのようなことが起こるのか、不思議である。いずれもそれぞれア行、ワ行渡り語のひとつであるが、他の「わ-あ」「ゐ-い」「wu-う」「ゑ-え」にも探索を進めればさらなる対照関係が見つかるのかどうか。因みにこの「を-お」対照には昔から多くの人が注目し、多くの議論がある。完