「たづ-つる(鶴)」と「かはづ-かへる(蛙)」 (007)

 このふたつを並べたのは、語形が非常によく似ていることと、そのためかどうか、左が歌語、右が俗語という使い分けがはっきり行われていたという理由による。

 

 「たづ」「つる」からは、「つる」がラ入語で本来は一拍語「つ(鶴)」であることが透けて見える。「たづ」は言うまでもなく「た+つ鶴」で、語頭の「た」は単なる接頭語でもよいが、ここは”田”、或いは近縁の”地”と見て、地上に舞い降りて餌をついばむ「つ」を「たづ」と呼びならわしたのであろうと見る。

 

 いささか悪乗りのようであるが、「さる(猿)」は「つる」と同様に「さ猿+る」と考えられるのである。つまり本来は一拍語「さ(猿)」であった。このことは各地にある「さしま猿島」「さわたり猿渡」などの地名の存在が支援材料となる。猿の別名の「まし/ましら」は不詳である。

 

 問題は「かはづ」と「かへる」である。やはり「かへる」から、これは「かへ+る」と考えるほかなく、「かへ」をもとに、「かはづ」を「かは+づ」と見て「かは」との(kh)縁語関係を考えることになる。今のところ見通しは立たないが、「かはづ」の「つ/づ」が判明すれば自動的に二拍語「かは/かへ」が蛙と決まることになる。完