「きのふ」は「けふ」の物語 (010)

 とは言っても語学に面白く可笑しい話があるわけはなく、相も変らぬつまらない講釈咄しである。

 

きそ/きぞ 昨夜 - けさ 今朝
きのふ  昨日 - けふ 今日
こそ/こぞ 去年
(ことし今年)
 
 「きのふ」も「けふ」も漠然と非常に古い言葉のような感じがする。いずれも万葉語であり古事記語であるが、それらを遥かに越えた大昔からあったように思われる。そのせいかどうか、おそらく体系をなしていたであろう「き、け、こ」が崩れていて、それに続く日や朝、昼を表わすであろう語も崩れている。「きのふ(昨日)」は「きふ」が長語化したものではないだろうか。「けふ」から見て、日をいう「ひ」は渡り語「ひ、ふ」であったであろう。「けさ」から見て、「あさ(朝)」は「さ」のア接語の可能性が高い。完