「けやき(欅)」と「かやのき(榧)」 (016)

 木や草は和人の生活に密接に結びついたものでるが、余りに近すぎるせいかどうか、その名前を解釈することは非常に難しい。木の名前を見てもばらばらで、そこに何かの鍵を見出すことは難しいと思われる。その中で、例えば標記の「けやき」と「かやのき」は、本来は「けや」「かや」と見られ、共にこの地の代表的な高木で建屋をはじめ道具器具や土木用材として実用性が高く、これを(ky)縁語と見ることが出来るであろう。

 

 では「けや」「かや」とは何か。さまざまな(ky)語の中でぴったり来るものがないが、「きよし(清)」「けやけし」「こよなし」の(ky)縁語群が大木を見上げた時の気持ちを表わしているようで比較的近いと思われる。

 

 木の和名は150箇ほど残されている。その中で「〇〇(の)き/ぎ」の形のものは、やはり、「〇〇(の)木」と考えられる。このとき、「き木」の渡り語「く」「け」「こ」が出現せず、「き」一本鎗であることにはどのような理屈が考えられるのであろうか。
 下の区切りには異論も少なくないであろうが、ここは単にこういう考え方もあるという見本である。

 

あは/あはき(檍)、いぶき(伊吹)、か/かき(柿)、かや/かやのき(榧)、くす/くすのき(楠)、くぬ/くぬぎ(椚)、けや/けやき(欅)、さか/さかき(榊)、さ/さつき(皐)、す/すぎ(杉)、つ/つき(槻)、つば/つばき(椿)、な/なぎ(梛)、にしき/にしきぎ(錦木)、ねむ/ねむのき(合歓木)、ほほ/ほほのき(朴)、ひ/ひのき(檜)、ほそ/ほそき(曼椒)、ま/まき(槙)、まさ/まさき(柾)、や/やなぎ(柳)、wu/wuつぎ(卯木)

 

 その昔、杉を「す」、檜を「ひ」、槙を「ま」などと呼んでいた時代があったであろう。完