「たか(高)/たく(長く)、たけ(岳)、つか(塚)/つく(築く)、とこ(床)」 (017)

 標記の「たか高/たく長」「たけ岳」「つか塚/つく築」「とこ床」の四語は、共通して「高い」の意をもつ(tk)縁語と見られる。

 

 二拍動詞「たく」は、通常「長く」と書かれるが、果たしてこれが位置の高さと結びつくのかどうか。そうとすれば「たくみ(巧み/匠)」などもこの高いを言う(tk)縁語群に入ってくることになる。動詞図を描いてみると次のようになるであろう。

 

た( )-たく(長く)-たかぶ(高かぶ)-たかぶる-たかぶらす-たかぶらせる
           -たくむ(巧くむ)「たくみ(巧み/匠)」
           -たけぶ(猛けぶ)「さけぶ(叫ぶ)」(t-s相通語)
           -たける(長ける)
           -たける(闌ける)

 

 こうして見ると、「たく」は「日がたく(太陽が高くなる)」あたりを大もととして、気分の高まり、腕前の確かさ・高さ、大声を出すこと等々へ拡散していったということかも知れない。ともあれ、上記の三拍語はさておき、「たく」はこの語群の中心語としてあるであろう。

 

 「たけ」には「岳」のほか「丈」「竹」もあり、いずれも同じ(tk)縁語と考えられる。

 

 「つか塚」は、諸辞書が言うように”土を小高く盛り上げた所”の意で、本来はやはり墓所であったであろう。「つか」は二拍動詞「つく(築く)」の名詞形でもあり、「つく」自体が”土を高く盛り上げる”意の(tk)縁語である。また「つかさ(司・阜)」は、「つか+さ」以外にないが、これを役所の長の地位にある人物と見れば、「つか(高い)+さ(人)」と考えられる。「さ(人)」は、二拍動詞「をす(治す)」の名詞形「をさ(統治すること、統治する人)」、或いは「を(統治する)+さ(人)」を参考にしたものである。

 

 「とこ(床)」は問題ないと思われる。

 

 日国「たけ岳」の語誌欄には『たけ(長・丈)」とともに、形容詞「たかし(高)」の語幹「たか」と同根で、下二段動詞「たく(長)」とも関連付けられる』とあり、また「つか塚」の語源説欄には「たか高」と結びつけた説がいくつも見られる。

 「たか」「たけ「つか」までは昔から関連語として知られていたようであるが、そこに「とこ床」が入っていない。「とこ」は意味と語形から明らかにこの(tk)縁語群に入る。”子音コンビ”と言う視点を欠いては目が行き届かなかったのであろう。完