両の足を互い違いに前に蹴出して激しく移動することを言うカ行縁語群である。ゆっくり行くのは「あゆむ、あるく」で、これは別に扱った。一見して無理のない分かりやすい語群である。整然たる和人の頭の中を見る思いである。足を動かすので「し(足)」に絡むサ行語が予想されるが、そうはならなかった。
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か(駆)-かく(駆く)-かくる(駆くる)
-かけす(駆けす)-かけさす-かけさせる
-かける(駆ける)-かけらふ(空を「翔ける」とも)
-かす(駆す)⇒はす
-かつ(徒つ)
-かる(駆る)-からる(駆らる)-かられる
き( )
く(蹴)-くwu(蹴wu)「くゑはららかす(蹴散す)」
け(蹴)-ける(蹴る)-けらす(蹴らす)-けらせる
-けらる(蹴らる)-けられる
こ(越)-こす(越す)-こさす(越さす)-こさせる
-こさる(越さる)-こされる
-こゆ(越ゆ)-こyeる(越yeる)
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は(馳)-はす(馳す)-はさす(馳さす)(「かす(駆す)」のk-h相通語)
-はしる(走しる)-はしらす-はしらせる
-はせる(馳せる)
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広くとれば、ここに「かむ-かがむ、くむ-くぐむ、こむ-こごむ」を組み込むことができるかも知れない。まったくの別語とは言えないであろう。
さらに「くつ(沓)」と「げた(下駄)」である。ともに上の動詞図に納まりそうであるが今のところうまく行かない。
動詞図からは離れるが、「げた(下駄)」は「けた(桁)」の異形とも考えられる。「はしげた(橋桁)」の「けた」で、どちらも同じ構造をしている。「けた桁」も不明であるが、「たげた(田下駄)」の成句もあり、日国「けた(桁)」の項の方言欄によっても田植作業との関連が多く見られるところから、「けた桁→げた下駄」の線は今後の課題であろう。完