標記の三拍動詞は、どれも一本の線で繋がっている。これらに共通するものは、内容としては「火」や「熱」であり、どれも加熱や燃焼現象のさまざまを言っているであろう。語としては、火や熱を意味する第二拍の「ぶ、べ、む、も」であり、これらが「燃える」ことを言う一拍語「も」の渡り語として標記の五語を貫いているのである。
今日、燃焼を言う語は「もやす、もyeる」であり、これを動詞図に展開すると下図のようになるであろう。
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【ま/ば】
【み/び】
【む/ぶ】
ア接: -あぶ(焙ぶ)-あぶす(焙ぶす)
-あぶる(焙ぶる)「あぶら(油/脂)」
イ接: -いぶ(燻す)-いびる(燻びる)-いびらる-いびられる
-いぶす(燻ぶす)-いぶさる-いぶされる
-いぶる(燻ぶる)-いぶらる-いぶられる
ク接: -くぶ(焼ぶ)-くばす(焼ばす)
-くばる(焼ばる)
-くぶす(焼ぶす)
-くべる(焼べる)
ケ接: -けぶ(煙ぶ)-けぶる(煙ぶる)
-けむ(煙む)-けむる(煙むる)-けむらす「けむり(煙)」
ス接: -すぶ( )「ち(内)はほらほら、と(外)はすぶすぶ」
クス接〔く+す〕:くすぶ(燻すぶ)-くすぶる
ふすぶ(燻すぶ)-ふすぶる(k-h 相通語)
ト接: -とむ(点む)-ともす(点もす)-ともさす-ともさせる
-ともる(点もる)
-とぶ(点ぶ)-とぼす(点ぼす)
-とぼる(点ぼる)
【め/べ】
【も/ぼ】
も(燃)-もす(燃す)-もさす(燃さす)-もさせる「もぐさ(燃草/艾)」
-もさる(燃さる)-もされる
-もゆ(燃ゆ)-もやす(燃やす)-もやさる-もやされる「ぼや(小火)」
-もやせる
-もゆる(燃ゆる)
-もyeる(燃yeる)
-もよふ(燃よふ)-もよほす
-もる(燃る)
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この図は、類似の動詞図とは少し異なっている。もとになる一拍語「も/ぼ(燃)」の縁語には「む/ぶ」ひとつしかなく、またその「む/ぶ」に接頭語をとる前接語が多いことである。
接頭語の違いは燃え方の違いを表わしているであろうが、今のところ見当がつかない。特に「くぶ(焼ぶ)」と「けぶ(煙ぶ)」であるが、「けぶ」から「けむり/けぶり(煙)」が出た理由が不明である。「くむり/くぶり(煙)」でもよかったであろうからである。
「ともす/とぼす」は「点火する」意であり、燃え方ではないので他の前接語とは少し意味合いが異なる。ただわれわれは現代語をもとに考えるほかないので、このような議論は無意味であるかも知れない。完