突然であるが、例えば「いろ(色)」という二拍語を考えようとするとき、これまで「私家版和語辞典」や本サイトでも紹介してきたさまざまなプロセスを踏まえることになる。そうすると、途中の煩わしい過程を省略することになるが、これは、イ段の二拍語「きろ」「しろ」「ちろ」「にろ」「ひろ」「みろ」「yiろ」「ゐろ」の8語のうちのひとつが相通現象によって「いろ」となったものであるということが結論として得られる。これ以外にない。
そうとすれば、次の段階は、この「きろ」「しろ」「ちろ」「にろ」「ひろ」「みろ」「yiろ」「ゐろ」のうちどれが「いろ(色)」になったかの判定である。だがここに来ればもう議論の余地はなく、「しろ」ひとつに絞られる。
つまり「しろ(白)」が(s-&)相通現象によって「いろ(色)」に転じたとの結論が得られたのである。一見奇妙なようであるが、これの正否に議論の余地はない。類似の相通現象に「さは(多)⇒あは」「さら(新*更)⇒あら(新)」が存在することによって補強されるであろう。
もしこれが釈然としないということであれば、和語の言語事実に照らして自らを納得させる物語を構築するほかない。それほどに明快な追及過程なのである。
完