音や声そのもの、また音や声を立てる意の語がナ行に集まっている。
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な:「な名」。「なまへ名前」の「な」である。「な名」と音との関係は「なたかし(名高し)」の存在によって明らかである。”名広し”などとは言わない。「よびな(呼び名)」も支援材料となるであろう。”書き名”などとは言わない。「なづける」とは従って物や人に音(な/ね)を与えることである。和語の長い歴史の中ではその音に文字を当てる風習などは最近も最近、つい昨日のことである。名は音なのである。
な(音)-なく(鳴く)-なかす(鳴かす)-なかせる「さなく鐸、ねなく(音泣く)」
-なかる(泣かる)-なかれる
-なける(泣ける)
-なす(鳴す)「うちなす打鳴、かきなす掻鳴、ふきなす吹鳴」
-なる(鳴る)-ならす(鳴らす)-ならせる
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に:「に瓊」。「に/ぬ」は玉の意であるが、ただの玉ではなく、音の出る玉である。玉どうしが当たって出る音を言うのか、中空の玉で中に入れたもので音を出すのかは分からない。
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ぬ:
ぬ(鳴)-ぬる(鳴る)「ぬて/ぬりて鐸」
また一拍語「ぬ瓊」がある。玉の意である。「ぬほこ(瓊矛)」「ぬなと(瓊ナ音*瓊響)-ぬなとももゆらに」。「ぬほこ」は、玉を飾った矛であろうが、単なる飾りではなく、振れば音が出る矛であることが名前の由来である。その音は「もゆら」に鳴ったということであるが、この語も音も見当がつかない。
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ね:「ね音」。
ね(鳴)- -ねつく(哭つく)-ねつかふ〔葬送にあたって号泣する〕「ね音、ねなく(音泣く)」
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の:
の( )-のる(告る)-のらす(告らす)
-のろふ(呪ろふ)-のろはる-のろはれる
イ接:いなくイ鳴
イ接:いのる祈
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と(音)-とぬ( )-となふ(唱なふ)-となへる
-とふ(問ふ)
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ここで問題は「おと(音)」である。「おと」はオ接語「お+と音」であることははっきりしている。その「と(音)」が上記「の(告)」の(n-t)相通語ではないかと思われるのである。「と音」が孤立しているところからも、「の」の相通語であることはおそらく間違いないであろう。驚くべき関係性である。
完