「わ(藁)」「ゐ(藺)」「を(麻)」 (53)

 「わら」は、麦や稲の中空の茎を乾燥させたもので、そのまま「しきわら敷藁」や「ねわら寝藁」として利用するほか、さまざまな家具材や建築材料として和人の生活に不可欠の素材である。「わら」は、本来一拍語「わ」であったものが長い時代を経て接尾語「ら」をとって長語化したものと考えられる。

 

 生活上の重要な素材という点では「ゐ(藺)」がある。藺草(ゐぐさ)を乾燥させた「ゐ(藺)」は、畳表として今日も盛大に使われているが、その昔はそのまま蓆に編んで日常生活に必須の製品であったであろう。

 

 最後に「を(麻)」である。この「を」を「wuん(績む)」でやはり「を(緒)」とし、これを編んで麻布とした。最も重要な衣類の材料であったであろう。

 

 これら生活必需品の三語「わ藁、ゐ藺、を麻」はきれいなワ行渡り語をなしている。和人はこれらを一体として捉えていたと考えられる。