「あは/さは」と「おほ」が(&h)縁語であることが妥当な見方であることに異論はないであろう。「あは」「さは」は(&-s)相通語で、例語は「あめ-さめ雨」「あを-さを青」など少なくない。「さは」はしばらくおいて、「あは」と「おほ」は明らかに(&h)縁語である。
「おほき〔大きい〕」は今日盛大に使われているが、「あは/さは」は古語となって辞書の中にのみ残ることとなった。方言となってどこかで形を変えて使われているかも知れない。
「降る雪は”安幡爾(あはに)”な降りそ吉隠(よなばり)の猪養(ゐかひ)の岡の寒からまくにm203」
「磯の崎漕ぎ廻(た)み行けば近江(あふみ)の海八十の湊に鵠(たづ)”佐波二(さはに)”鳴くm273」
ここで「あは」と「おほ」の語形から、(&h)縁語の域を越えて、両語はもう一段深いところで繋がっているであろう。それぞれをア接語、オ接語と見ることで、両者はハ行縁語、或いは(h)縁語と考えられる。また「ほ」にはあちこちで登場する「ほ(秀・穂・帆・炎)」があるが、これは「おほ」とは直接的に結びつくが、「あは」とはかなり遠いようである。しかし「あは」に”大きい”の意味があることも考えられる。「あは」「おほ」「ほ(秀)」はさらに深いところで繋がっているであろう。
完