「わな(罠)」と「あな(穴)」(60)

わな罠(わなく絞;しぎわな鴫罠)
あな穴(おとしあな落穴)

 

 両語は(w-&)相通語の関係にある。どちらも鳥獣を捕まえるための仕掛けである。竹籤や紐を丸くしておき、それを絞ってそこに入った獣や鳥を捕らえる仕掛けが「わな」で、「あな」は言うまでもなく鹿や猪を落とし込む”落とし穴”である。どちらが早く出現したか。語学からは「わな→あな」であるが、当時の生活面から見れば同時か「あな→わな」のように思われる。

 

 「わな」は明らかに「わ輪+な」であり、同様に「あ輪+な」であろうが、後項の「な」が不明である。これは「あひだ間」「からだ體」などの「だ」と同じ付属語、接尾語とも考えられるが、ラ行語とは違って、本来は何か意味をもっていたであろうと考えられる。

 

 日国「わな」の語源説欄に『アナ(穴)の転で、ヤナと同源か〔東雅〕』説が見えるが、「やな(簗)」を加えるのは行き過ぎと思う。