「くる(食る)」「くる(組る)」「とる(飛る)」「なる(並る)」「にる(睨る)」(65)

 動詞図を描いていると「二拍動詞がない!」と気づくことがよくある。それは、例えば「またぐ(跨ぐ)」のように二拍名詞に動詞語尾がついたようなものは当然で、「まつ-またぐ」のような二拍動詞「まつ」は見つからない。

 

 その中で次の五例については(他にもあるかも知れないが)当然存在しなければならない「□る」の形の二拍動詞がないのである。星印「*」をつけて簡略版の動詞図とともに掲げる。

 

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く(口)-くふ(食ふ)-くはす(食はす)-くはせる
    *くる(食る)-くらふ(食らふ)-くらはす-くらはせる
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く( )-くむ(組む)-くます(組ます)-くませる
           -くまる(組まる)-くまれる
    *くる(組る)-くらぶ(比らぶ)-くらべる
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と(飛)-とぶ(飛ぶ)-とばす(飛ばす)-とばせる「とび鳶」
    *とる(飛る)「とり鳥」
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な( )-なむ(並む)
    *なる(並る)-ならぶ(並らぶ)-ならばす-ならばせる
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に( )-にむ(睨む)
    *にる(睨る)-にらむ(睨らむ)-にらまる-にらまれる
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 おそらく当初は存在したものが、かなり早い段階で脱落して今日に伝わらなかったのであろう。だがどうしてこの五例だけなのか、どうして「□る」動詞だけなのか、などの疑問が残る。些細な問題なのか、大きな問題の一部なのか、後考にまちたい。