二拍語「いた(板)」は、イ接語「い+た(板)」と考えられる。もとは一拍語「た」であった。
日国「いた板」の語源説欄にも、『イは発語。タは手〔東雅・和訓栞・国語の語根とその分類=大島正健〕、イは発語。タはタヒラ(平)〔名言通〕』の”イ接語”説が見られる。
語頭に来る例では「たな(棚)」がある。「た(板)+な」と考えられる。古代の半構造船と言われる舟は、丸木舟の左右両舷側に一枚から三枚の細長い板を積み上げて容積を増したり波を防いだりしていたという。もちろん前後も適当な板で塞いでいたであろう。万葉集に出てくる「たななしをぶね」は、こうした「たな」を装備しないただの丸木舟をいうのであろう。そのほか二つの支点の間に板を渡してその上に商品やさまざまな物を載せるが、その板を「たな」と呼んでいる。「おたな(店)」の前身である。
問題は「た(板)+な」の語末の「な」で、解釈がつかない。唯一の援軍は「くな(管)」である。後に「くだ」と変化するが、「く(管)+な」と考えられ、やはり「な」が不明である。不明どうしで接尾語くらいに考えておく。
語末に来る「た(板)」の例は少なくない。辞書には「あうた/あをだ/あんだ(あみいた編板*箯輿)」「きぬた砧」「そぎた枌板」「ひきた/ひた引板」「ふだ札」などが上がっている。
「はしげた(橋桁)」や「ゐげた(井桁)」の「けた(桁)」もそれと考えられる。「げた(下駄)」は橋と同じ構造であり、「けた」と同語と考えられる。ともにふたつの支点の上に渡した「た(板)」であるが「け(?)+た(板)」の「け」が不明である。「け」は語例が少なく手がかりに乏しい。橋の支柱と支柱の間に渡した板を『「け」+た(板)』と呼んでいる。その上を歩くための板である。『「け」の「板」』である。その「け」とは何か。完