「か/き/く/け/こ(気*香*酒)」カ行渡り語 (96)

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か:「か(香):かぐはし香妙、かぜ風、あきのか秋香」
き:「き(気*酒*霧);イ接:いき息/いきのを息緒、きり霧、くろき黒酒、しろき白酒、みき神酒、ゆき斎酒」
く:「く(気):くし(酒)、くしのかみ酒司、ことなぐし事無酒、ゑぐし笑酒」
け:「け(気):さけ酒、ゆげ湯気;かみのけ神、しほけ塩気、ちのけ血気、ひとけ人気、ほけ火気、もののけ」
こ:「こり(香)」

 

サ接:「さか/さけ(酒)〔複合語「さ+か/け気」で、本来は酒を液体ではなく香気として捉えていたと考えられる。「さ」は不詳であるが、昔から「さつき、さなぶり、さなへ、さをとめ」などの「さ」と考えられている〕」

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か(香)-かぐ(嗅ぐ)-かがす(嗅がす)-かがせる-かがせらる-かがせられる「か香」

           -かがふ(香がふ)
           -かがる(香がる)-かがれる
    -かwu(香wu)-かをる(香をる)
き(気)-きる(霧る)-きらす(霧らす)「き気」「あまぎらす天霧、うちきらす打霧、かききらす掻霧」
           -きらふ(霧らふ)「あまぎらふ天霧、たなぎらふ棚霧、みなきらふ水霧」
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イ接:い( )-いく(生く)-いかす(生かす)-いかさる-いかされる
                       -いかせる
              -いかる(怒かる)
              -いきむ(息きむ)
              -いきる(生きる)
              -いける(生ける)「花を活ける」「いけ池」
              -いこふ(憩こふ)(息を継ぐ)
オ接:お( )-おく(生く)-おこす(熾こす)
              -おこる(熾こる/怒こる)

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 二拍動詞「いく(生く)」は”息をする”意の一拍動詞「く」のイ接語「いく(息く)」である。この「く」は渡り語”か(香)、き(気)、け(酒)”のひとつである。和語では”生きるとは息をすること”であると明快である。

 

 気体、空気を言うカ行渡り語のうち今日でも「か/き/け/こ(気)」はあらゆる場面で使われるが、「く」は「いく(息く、生く)」に残っている程度である。この「く」は単なる動詞語尾ではなく、これこそが語の意味を支えている。「こ」の「こり(香)」は「こ(香)+り(接尾語)」と考えられる。完