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か:「か(體)-から(柄)-からだ(體)」「おほがら大柄、こがら小柄、なきがら亡骸、みがら身柄」
き:
く:く(體)、「むくろ(身柄*骸)」「くれがし(何某)」「なにくれ」
け:
こ:こ(體)、こも薦(こ+も裳)、ころも柄裳*衣、こころ小柄*心、みごろ身頃(本来は裁縫用語ではない)
「からだ」の「か」は、上記のように、「からだ」を言うカ行渡り語のひとつと考えられ、一拍語の「か」から「から」の時代を経て「からだ」へと長語化している。ここに見る「から」「くろ」「ころ」は今日も普通に使われ、ひとつの渡り語として疑問の余地なく受け入れられるであろう。
「こも(薦)」は、今は植物の名でもあるがそれはこの語が成立して後の転用である。本来は二拍語「こ(體)+も(裳)」、即ち”身体を覆う着物”の意であった。原初はそれこそ”こも草”で織った衣裳であったであろう。一拍語「も(裳)」は万葉集で「裳の糸、裳の裾」などの用例が見られる。「こ(體)」はその後接尾語「ろ」をとって「ころ」と長語化し「ころも(體裳*衣)」をつくった。
「こころ(小體*小柄*心)」は、証拠もなく、議論が多いと思われるが、従来「こころ」の語を事大視し過ぎる傾向があり、ここは単純に”小さいからだ”と見てみたものである。当たらずとも遠くないであろうと思っている。
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ところでカ行渡り語にはまた、下記のように、着物を”着る”ことを言うものがある。
か:か(着)-かる(着る)
き:き(着)-きす(着す)-きさす(着さす)
-きせる(着せる)
-きる(着る)
く:
け:け(着)-けす(着す)
-ける(着る)
こ:
見方によっては、この”着る”カ行渡り語と上記の”からだ”を言うカ行渡り語は本来ひとつのものであったとすることが出来るように思われる。完