「はだか」と「はだし」のコンビは、語形がきれいに揃っているためであろう、その語源について昔から多くの人の興味を引いたようである。日国の語源説欄によれば、その語源説はそれぞれ次のようである。
「はだか」:『ハダアカ(肌赤)の義〔和句解・日本釈名・類聚名物考・俚言集覧・名言通・国語学=折口信夫・猫も杓子も=楳垣実〕』
「はだし」:『ハダアシ(肌足・膚足)の義〔俚言集覧・言元梯・松屋筆記・語・和訓栞(増補)・日本語原学=林甕臣・大言海・日本語源=賀茂百樹・猫も杓子も=楳垣実〕』
これは、人間の皮膚を「はだ」と呼ぶようになって後の説とすれば一概に誤りとすることはできない。特に「はだし」の方は、「シ」は「アシ」の略などと言っていないので、「ハダアシの義」は問題ない。「あし」は「し(足)」のア接語といった余計なことを知った後では却って間違ってしまうところでる。
一方「はだか」の「ハダアカ(肌赤)」説は無理筋ではあるが、それは承知の上で論者は面白がって言っているのかも知れない。どう考えても”肌が赤い”や”赤い肌”と「はだか」が結びつきそうにない。もし白人種であれば「はだあか(肌赤)」も何となく連想されるが、万年前の和人種では難しい。ここは「はだ+か」と分解して「か」を追及するほかない。
ところで三拍語「からだ(体)」であるが、これまた明らかに{から+だ」である。ここで前項の「から」に該当しそうなものとして、「おほがら(大柄)、こがら(小柄)、なきがら(亡骸)、みがら(身柄)」などが考えられる。この「がら」が「からだ」の「から」であることは間違いなさそうである。「から」はまた「か+ら(接尾語)」と考えられるので、結局”身体、体躯”を言う「からだ」の意味を担う拍は語頭の「か」ということになるであろう。
因みに「からだ」の「だ」であるが、これは「あひだ(間)、いかだ(筏)、はなだ(縹)、まちだ(町田)、わさだ/わせだ(早稲田)」などの「だ」と同じものと考えられる。これら例語はどれも前方の二拍に意味があって完結しており、「だ」は、漢字表記はさまざまであるものの、接尾語と見られる。これは恰も学校文法で言う断定の助詞の「だ」の元祖のようなもので、”それは何だ”という質問に対して”これは、から(体)だ、あひ(相*間)だ、いか(浮か)だ、はな(花)だ、・・・”と答える問答を思わせる。「だ」には特に意味はない。
「いかだ」の「いか」は「うき(浮)」の(&k)縁語で、まさに木材の「浮き」と考えられる。今のところこれ以外に「いかだ」を解釈することはできない。日国の語源説欄にも『イカはウカブ(浮)の語根の転。タはイタ(板)の上略〔大言海〕。ウキテ(浮木手)の義〔言元梯〕』説が見える。
また例えば「わせだ(早稲田)」であるが、これも「田」の字は恣意的に使われたもので、「わせ」の田んぼの意に限ることなく、「おくて」ではなく「わせ」であることを強調する語と受けとることが出来る。完