動詞図 「ア行、あす(生す)、ある(生る)」(002)

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「あす(生す)、ある(生る)、ある(有る)、ある(露る)、ある(新る)、ある(荒る)」

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あ(生)-あす(生す)-あさす(生さす)-あさせる

           -あせる(生せる)-あせらる

    -ある(生る)-あらす(生らす)-あらせる-あらせらる-あらせられる

    -ある(有る)

    -ある(露る)-あらふ(露らふ)-あらはす

                    -あらはふ

                    -あらはる-あらはれる

    -ある(新る)-あらく(新らく)

           -あらす(新らす)

           -あらつ(新らつ)-あらたむ-あらたまる(新たむ・改たむ)

                         -あらためる-あらためらる-あらためられる

           -あらふ(新らふ)-あらはす-あらはせる-あらはせらる-あらはせられる(洗ふ)

                    -あらはる-あらはれる

    -ある(荒る)-あらく(荒らく)-あらかふ

                    -あらける

           -あらぐ(荒らぐ)-あらがふ

                    -あらげる

           -あらす(荒らす)-あらさす-あらさせる

                    -あらさる-あらされる

                    -あらそふ-あらそはす-あらそはせる(争ふ)

           -あらぶ(荒らぶ)-あらびる

                    -あらぶる

           -あれぶ(荒れぶ)

           -あれる(荒れる)

さ( )-さる(晒る)-さらす(晒らす)-さらさる-さらされる 「さら(新*更)」(s-&相通語)

 

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 「ある」ということは、無から有を生ずる(「ある生」)ということだけでなく、隠されていたものが露わになることをも言い(「ある露」)、それは同時に新しいものであり(「ある新」)、生まれたものは存在することになり(「ある有」)、新しいものはまだ洗練されておらず粗である(「ある荒」)、という一連の事象が和語では一拍語「あ」で把握されている。

 

 ところで、この「あ」「ある」は、和語に珍しい本来のア行語であろうか。おそらくそうではなく、現在は確認されていない「わす」「わる」など、ワ行語の(w-&)相通語と考えられる。そのことは最後に「さる-さらす」の(s-&相通語)が見られ、さらに二拍語「あら(新)」の縁語に、「さらち更地」「さらゆ新湯」などと言うときの「さら(更*新)」があることによって予想される。前記の「わす」「わる」の存在はまだ確認されないが、「わる→さる→ある」と変化してきたものと考えられる。この型の変化は「わく(分く)」→「さく(裂く)」→「あく(開く)」のように少なくない。つまり上記の「ある」は、おそらく万年単位の昔の「わる」から「さる」「ある」と変化してきた最後の新語である。

 

 上記の「あす(生す)、ある(生る)、ある(新る)」などと縁語関係にあるワ行語としては、”若さと若さゆえの愚行”を言うワ行縁語群がある。

 

 わか(若)/わけ/wuこ/をけ/をこ(戯奴*烏滸*尾籠-をけざる烏滸猿、をこのさた烏滸沙汰)

 わさ/わせ早稲(わさいひ早稲飯、わさささけ酒、わさほ早稲穂)

 wuそ(鷽)、をそ(軽率-おほをそとり大軽率鳥)-をさ幼(をさなし)

 をつ(変若)(をちかへる若返、をちみづ変水、をとこ男、をとめ少女)

 

 この点については本稿で別にまとめて述べる。

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