動詞図『ワ行、「わく(分く)」「わる(割る)」』(005)

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「わ/ゐ/wu/ゑ/を(分)、わく(分く)、さく(裂く)、あく(開く)、わる(割る)、ある(離る)、ゐる(齗る)、wuく(穿く)、wuぐ(穿ぐ)、ゑぐ(刔ぐ)、ゑつ(嘲つ)、ゑふ(酔ふ)、ゑむ(笑む)、ゑる(嘲る)、ゑる(彫る)、をる(折る)、をwu(折wu)」

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わ(分)-わく(分く)=わわく(わ分く)〔細分化する〕

           -わかす(別かす)

           -わかつ(分かつ)-わかたる-わかたれる

           -わかる(別かる)-わかれる

           -わきつ(分きつ)-わきたむ(「分き矯む」ではない)

           -わきむ(分きむ)-わきまふ-わきまへる

           -わける(分ける)-わけらる-わけられる

さ(分)-さく(裂く)-さかす(裂かす)-さかせる(w-s相通形)

           -さかつ(裂かつ)-さかたる〔屠つ〕

           -さかる(裂かる)-さかれる

           -さくむ(万210/971/4465)

           -さくる〔地面をくり抜いて水を流す〕

           -さける(裂ける)(「さく(避く)-さける(避ける)」は別語)

あ(開)-あく(開く)-あかす(開かす)-あかせる(w-&相通形)

           -あかつ(開かつ)-あかたる-あかたれる「あかつ分(w-&)、あかちだ班田」

           -あかる(開かる)「行きあかる、罷りあかる」(「あかる離」は「かる」のア接語)

           -あける(開ける)-あけらる-あけられる

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わ(割)-わる(割る)=わわる(わ割る)「わわらばに」「ことわる/ことわり断*事割」

           -わらす(割らす)-わらせる

           -わらふ(笑らふ)-わらはす-わらはせる-わらはせらる-わらはせられる

                    -わらはる-わらはれる

                     -わらる(割らる)-わられる

           -われる(割れる)

さ( )-さる(  )〔分割の意の二拍動詞「さる」が存在していて然るべきところ〕

あ( )-ある(散る)-あらく(散らく)-あらける(w-&相通形)

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ゐ(齗)-ゐる(齗る)〔歯に穴が開く(歯が痛む)〕

wu(穿)-wuく(穿く)-wuかつ(穿かつ)「wuかみ窺見(斥候)、wuけくつ穿沓;wuかがふ(窺ふ)」

    -wuぐ(穿ぐ)-wuがつ(穿がつ)-wuがたる-wuがたれる「wuげと(穿戸)」

           -wuぐふ(墳ぐふ)〔できものがただれる〕

ゑ(彫)-ゑぐ(刔ぐ)-ゑぐる(刔ぐる)-ゑぐらる-ゑぐられる(「くる刳」のヱ接語もある)「ゑぐし笑酒」

    -ゑつ(嘲つ)-ゑつる(嘲つる)「ゑつらかす」

    -ゑふ(酔ふ)-ゑはす(酔はす)「ゑひさまたる/ゑひさまたごる」(後に「よふ(酔ふ)」に転じたか)

    -ゑむ(笑む)-ゑまふ(笑まふ)「ゑまし、ゑまはし」

    -ゑる(嘲る)-ゑらく(嘲らく)「ゑ啁*嘲-ゑる嘲ル」「ゑりきざむ、くじりゑる」《ゑらゑら》

           -ゑらふ(嘲らふ)

    -ゑる(彫る)-ゑらく(彫らく)

を(折)-をる(折る)=ををる(を折る)「をりかへす折返;なをり波折」「をの斧、をのと斧音、をのや斧箭」

           -をらす(折らす)-をらせる

           -をらる(折らる)-をられる

           -をれる(折れる)

    -をwu(折wu)-をゐる(折ゐる)

 

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 分裂、分割、分断、穿孔、彫刻、破断、曲折などを言うワ行渡り語「わ/ゐ/wu/ゑ/を」で、きれいにまとまっている。これらの意味は、ワ行音は、これを発音するには口唇や舌を大きく強く動かさなければならないことと無縁ではないであろう。

 

 ここに現われた「わる(割る)」が、先に掲示した「ある(生る、有る、露る、新る、荒る)」のもとの語であり得るかどうか。「ある(&aru)」が「わる(waru)」の(w-&)相通語と見る限り、この「わる(割る)」しかあり得ない。意味が遠いようであるが、広く植物界で莢が割れて種が飛び出すことを慮ると「割る-有る」説は妥当と思われる。別に「わす(割す)」の形が存在したか。

 

 虫歯の意には漢語「齗歯(ゐし)」「齲歯(うし/wuし)」があり、上記の「齗る(ゐる)」との関係が不明である。「ゑふ」「ゑむ」はいずれも顔面をくしゃくしゃにすることと思われ、漢語「破顔一笑」との偶然の一致がうかがわれる。

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