動詞図『ア行、「恐怖の「お」動詞」』(010)

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「おく(恐く)、おす(恐す)、おず(悍ず)、おつ(落つ)、おづ(怖づ)、おふ(追ふ)、おぶ(怖ぶ)、おむ(怖む)、おゆ(老ゆ)、おる(怖る)」

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お(恐)-おく(恐く)-おくす(臆くす)-おくする「おめずおくせず」

    -おぐ(  )

    -おす(押す)-おさふ(押さふ)-おさへる-おさへらる-おさへられる

           -おさる(押さる)-おされる

           -おそふ(襲そふ)-おそはす-おそはせる

                    -おそはる-おそはれる

           -おそる(恐そる)-おそれる「おそろし恐」

    -おず(悍ず)-おぞむ(悍ぞむ)「おずし/おぞし悍」「おぞまし悍」

    -おつ(落つ)-おちる(落ちる)

           -おつる(落つる)

           -おとす(落とす)-おとさる-おとされる

                    -おとしむ-おとしめる(貶む)

           -おとる(落とる)-おとろふ-おとろへる「おとろし/おそろし」

    -おづ(怖づ)-おぢく(怖ぢく)-おぢける(懼づ)《おづおづ、おどおど》

           -おぢる(怖ぢる)

           -おづる(怖づる)

           -おどく(脅どく)-おどかす-おどかさる-おどかされる

           -おどす(脅どす)-おどさる-おどされる

    -おふ(追ふ)-おはす(追はす)-おはさす

                    -おはせる

           -おはる(追はる)-おはれる

    -おぶ(怖ぶ)-おびゆ(怯びゆ)-おびやく-おびやかす-おびやかさる-おびやかされる

                    -おびやす

                    -おびyeる

           -おびる(怯びる)

    -おむ(怖む)-おめる(怖める)「おめずおくせず」《おめおめ》

    -おゆ(老ゆ)-おyiる(老yiる)

           -およす(老よす)

    -おる(怖る)-おらぶ(哭らぶ)

 

 

 ここの一拍語「お」は、暴風や噴火や地震や猛獣や外敵や、何か力強いものに対する恐れの気持ちを言う語のようである。『恐怖の「お」』である。おそらくワ行語「を」の転であろう。これには「怖、恐、怯、臆、懼」などさまざまな漢字が当てられているが、意味するところの違いはよく分からない。二拍目の動詞語尾「く、す、ず、づ、ふ、ぶ、む、ゆ、る」が二次的な意味の分化、或いは差異を表現しているはずである。正確な意味を知るには、縁語関係を押さえた上で、やはり用例の比較分析によることになるであろう。よく知られた成句「おめずおくせず」から見ても、「おむ」と「おく」の間にはやはりそれなりの違いがあると考えられる。

 

 「おく/おぐ」「おす/おず」「おつ/おづ」「おふ/おぶ」は対をなして、時代の経過につれて恐怖度が増し、それを示すために濁音化したのであろうか。「おyi(老)」は万葉歌から見てもやはり「おそれ」と捉えられていたように思われる。

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