動詞図『カ行、「か(赤)」』(011)

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「か(赤)、かく(赤く)、かぐ(赤ぐ)、あく(明く)、あけ(朱)、おく(熾く)」

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か(赤)-かく(赤く)-かかゆ(赤かゆ)-かかやく(赫かやく*輝かやく)

                    -かかよふ(赫かよふ)

    -かぐ(赤ぐ)-かがす(赫がす)

           -かがゆ(赫がゆ)-かがやく(赫がやく*輝がやく)

                    -かがよふ(赫がよふ)

           -かがる(赫がる)「かがり(赫火)」〔「かがり(篝)」は後世の工作物か〕

           -かぎる(赫ぎる)-かぎろふ「かぎろひ、たまかぎる」

           -かぐる(赫ぐる)

           -かげる(赫げる)-かげらす-かげらせる「ひかげるみや日輝宮」

                    -かげらふ

く(赤)~あく(赤く)-あかす(赤かす)-あかさる-あかされる(明かす)「あか赤、あき秋、あけ朱」(ア接)

           -あかぶ(赤かぶ)-あかばむ

           -あかむ(赤かむ)-あかまる

                    -あかめる

           -あかる(赤かる)-あからぶ

                    -あからむ-あからめる

                    -あかるむ

           -あきる(明きる)-あきらむ-あきらめる(諦らむ)

           -あける(明ける)

    ~いく(熱く)-いかる(怒かる)-いからす-いからせる

           -いきむ(熱きむ)-いきまふ-いきまはる

           -いきる(熱きる)-いきれる

           -いくぶ(憤くぶ)

           -いくむ(憤くむ)「いくみうらむ」

           -いこる(熾こる)

           -しかる(叱かる)-しからる-しかられる(「いかる」の&-s相通語)

    ~おく(熾く)-おきる(熾きる)「おきび熾火」

           -おこす(熾こす)「ひおこし火熾」

           -おこる(怒こる)-おこらす-おこらせる

                    -おこらる-おこられる

 

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 われわれに身近な二拍語「あか(赤)」は、本来は一拍語「か(赤)」である。「あか」はア接語である。そのことは唱歌『夕日』(葛原しげる作詞)の「まっかっかっか 空の雲 みんなのお顔も まっかっか」に端的に現われているであろう。またこの「か」は渡り語「か/き/く/け」のひとつであり、他にア接語「あき(秋)、あく、あけ(赤*朱*明)」などを作って今日に残っている。渡り語「こ」も存在しなかったとは考えにくく、どこかに痕跡を残していると思われる。「か」は色と光と熱をともに表現している。

 「あき秋」は、「あく」の名詞形であり、「き(赤)」が本意である。全山紅葉のときというに尽きる。山が真っ赤になるときが「あき」である。和人はこれを愛でた。日国の語源説欄に「草木が赤くなり、稲がアカラム(熟)ことから〔和句解・日本釈名・古事記伝・言元梯・菊池俗言考・大言海・日本語源=賀茂百樹〕」とあり、これが正解であろう。

 

 和語ではこの「か(赤)」をもとにした「かがゆ、かぎゆ、かがる、かげる」などが光り輝くさまを表現している。「こかげ(木陰)」「ひとかげ(人影)」は光のあやを言い、「かがみ(影見*鏡)」は人の「かげ」を見るものである。日国「かげとも」の冒頭に『「影(かげ)つ面(おも)」の変化した語。「かげ」は光の意』との特記がある。とまれ「かげ」は光である。

 

 ところが本来の明るい光線を言う「かげ(影)」はいつか「ひかり(光)」にとって代わられ、「かげ(影)」は逆に光がつくる黒い影を指すようになってしまった。「ひかり(光)」は、模写語「ぴかぴか」が示唆するように、本来、光を受けたものが発する光沢を意味したであろう。方言もそのことを示している。それがいつか「かげ」を追い出して明るい光線を意味するようになった経緯は今となっては知る由もない。「yiなびかり(稲光)」があるところから、稲の到来と前後するかも知れない。仏教の灯明と関係するかも知れない。

 

 この(&k)縁語群は「加熱」すると「赤く」なって「発熱」し「発火」するに至る一連の事態をも表わす。「いかる(しかる)怒」「おこる怒」は人が発熱し発火した状態を言う。ともとは「か/き/く/け/こ」渡り語のひとつであったであろう。

 

 なお「あく(開く)-あける」は、上記「あく(赤く)」とは全く別語で、「わく(分く)-わける」の相通語であり、その箇所で扱う。

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