動詞図『タ行、「て(手)」の動詞』(009)

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「た/つ/て/と(手)、たく(手く)、たぬ(手ぬ)、たむ(手む)、だく(抱く)、つく(築く)、つく(突く)、あつ(当つ)、うつ/むつ/ぶつ(打つ)、つる(手る)、とぬ(手ぬ)、とぬ(音ぬ)、とふ(問ふ)、とぶ(弔ぶ)、とむ(覓む)、とゆ(音ゆ)、どゆ(音ゆ)、とる(音る)」

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た(手)-たく(手く)=たたく(叩たく)-たたかす-たたかせる-たたかせらる-たたかせられる

                    -たたかふ-たたかはす-たたかはさす-たたかはさせる(戦ふ)

                               -たたかはせる

                    -たたかる-たたかれる

           -たくす(手くす)「(髪や袖を)たくしあげる」

           -たくむ(巧くむ)「たくまし快シ、たくみ巧*匠」

           -たくる(企くる)-たくらむ

           -たぐる(手ぐる)(「くる繰」のタ接とも)

           -たける(長ける)〔長ずる、上手である〕

    -たぬ(手ぬ)=たたぬ(畳たぬ)-たたなふ-たたなはる「くり畳たぬ」「たたなづく」

    -たむ(手む)=たたむ(畳たむ)-たたます-たたませる-たたませらる-たたませられる

                    -たたまる-たたまれる

だ(手)-だく(抱く)-だかす(抱かす)-だかせる-だかせらる-だかせられる

           -だかる(抱かる)-だかれる

ち( )

つ(手)-つく(突く)=つつく(突つく)-つつかす-つつかせる

                    -つつかる-つつかれる

           -つかふ(使かふ)-つかはす-つかはせる「「つかひめ使女、みつかふつみ身使罪*徒罪」

                    -つかはる-つかはれる

           -つかむ(掴かむ)-つかます-つかませる「つか束/柄」

                    -つかまふ-つかまへる

                    -つかまる-つかまれる

           -つくる(作くる)-つくらす-つくらせる

                    -つくらふ-つくろはす-つくろはせる(繕ふ)

                    -つくらる-つくられる

                    -つくろふ-つくろはす-つくろはせる(繕ふ)

           ~きづく(築づく)-きづかす-きづかせる(キ接)

                    -きづかる-きづかれる

    -つる(手る)〔魚を”釣る”は”吊る”ではなく、”つる/とる(手る/取る)”と解する〕

    ~あつ(当つ)-あたく(当たく)「あたかも当*恰」(ア接)

           -あたふ(与たふ)-あたはす(能はす)「あたひ値」

                    -あたへる-あたへらる-あたへられる(与へる)

           -あたる(当たる)

           -あてる(当てる)-あてらる-あてられる

    ~うつ(打つ)-うたす(打たす)-うたさす-うたさせる(ウ接)

                    -うたさる-うたされる

                    -うたせる-うたせらる-うたせられる

           -うたふ(歌たふ)-うたはす-うたはせる「うた歌」

                    -うたはる-うたはれる

                    -うたへる-うたへらる

               〔強調形〕-うったふ-うったへる-うったへらる-うったへられる

               〔強調形〕-うるたふ(ラ入)

           -うたる(打たる)-うたれる

    ~むつ(鞭つ)「むち鞭」〔(&-m)相通語〕(ム接)

    ~ぶつ(打つ)-ぶたる(打たる)-ぶたれる〔(m-b)相通語〕(ブ接)

    ~おつ(音つ)-おとぬ(音とぬ)-おとなふ「おと音、おとなふ音*訪}(オ接)

づ(手)~いづ(い手)-いぢく(苛ぢく)-いぢくる(イ接)

                    -いぢける《いぢいぢ》

           -いぢむ(苛ぢむ)-いぢめる-いぢめらる-いぢめられる

           -いぢる(   )

    ~こづ(こ手)-こぢる(抉ぢる)(コ接)

    ~すづ(す手)-すぢる(   )「すぢりもぢり撚曲」(ス接)

    ~ねづ(ね手)-ねぢる(捩ぢる)「ねぢまげる」(ネ接)

    ~もづ(も手)-もぢる(   )「すぢりもぢり撚曲」(モ接)

    ~よづ(よ手)-よぢる(捩ぢる)(ヨ接)

て(手)

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と(手)-とぬ(手ぬ)=ととぬ(整とぬ)-ととのふ-ととのへる

    -とる(手る)-とらす(取らす)-とらせる-とらせらる-とらせられる「みとらし御執*御弓」

           -とらふ(捕らふ)-とらはる-とらはれる「とらへひと囚徒*囚人」

                    -とらへる-とらへらる-とらへられる

           -とらむ(捕らむ)-とらまふ-とらまへる

           -とらる(取らる)-とられる

           -とれる(取れる)

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と(音)-とぬ(音ぬ)-となふ(唱なふ)-となへる

    -とふ(問ふ)-とはす(問はす)-とはせる-とはせらる

           -とはる(問はる)-とはれる

           ~あとふ(あ問ふ)〔誘う、勧める〕(「さどふ」の(s-&)相通形)(ア接)

           ~かどふ(か問ふ)-かどはす(勾引ふ)(カ接)

           ~さどふ(さ問ふ)(サ接)

           ~たとふ(た問ふ)-たとへる(喩とふ)(タ接)

           ~つどふ(つ問ふ)(集どふ) 「かむつどひつどふ神集」(ツ接)

           ~まどふ(ま問ふ)-まどはす-まどはせる-まどはせらる-まどはせられる(惑どふ)

           ~やとふ(や問ふ)-やとはす-やとはせる(雇ふ)(ヤ接)

                    -やとはる-やとはれる

    -とむ(覓む)-とめる(覓める)「ともし/とぼし乏、つまし倹」(ともし/とぼし-ともしぶ/とぼしぶ)

           ~いどむ(い覓む)-いどます-いどませる

                    -いどまる-いどまれる(挑む)(イ接)

           ~みとむ(み覓む)-みとめる-みとめらる(認む)(ミ接)

           ~もとむ(も覓む)-もとまる(求む)(モ接)

                    -もとめる-もとめらる-もとめられる

    -とぶ(弔ぶ)-とぶる(弔ぶる)-とぶらふ/とむらふ(弔ふ)

    -とゆ(音ゆ)-とよく(響よく)

           -とよむ(響よむ)-とよめく(鳴動)

                    -とよもす

    -どゆ(音ゆ)-どよむ(響よむ)-どよめく

                       -どよもす

    -とる(音る)=とどる(轟どる)-とどろく(轟く)-とどろかす

                             -とどろこす

           ~あとる(あ音る)-あつらふ-あつらへる(誂らふ)(ア接)

                    ーあとらふ-あとらへる(誂らふ)

 

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 「て(手)」をめぐる動詞群である。「て手」の渡り語「た/つ/て/と」をもとにした動詞系の語が集まっている。「たたく、つつく」などの頭積動詞、「当たる、歌ふ」などの接頭語のついた前接語、強調の濁音の一拍語「づ」などさまざまな語形が見られる。

 

 「つ(手)」については、「つ爪(つめ)」をもとにする二拍動詞「つく突」「つぬ抓」「つむ抓」などの交錯が見られる。

 「と(手)」は、手でものを「とる(手る/取る)」意と、手を叩いたり拳でこつこつと叩いて音を立てる意のふたつがあるように思われる。「おと(音)」はオ接語で、本来は手を叩いて出る音を一拍語「と(手*音)」で捉えていたと考えている。

 手を「うつ(打つ)」、手を「たたく(叩く)」ことと「うたふ(歌ふ)」の間には動作の種類としては大きな距離があるが、「心を打つ」がある。「うたふ」は人の心を打つことが本来の意味と考えられる。後に「うったふ」「うるたふ」と強調形があらわれた。

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