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● ● ≪ままま≫ ● ●
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「まく(目く)、まぐ(覓ぐ)、みす(見す)、みゆ(見ゆ)、みる(見る)、めぐ(愛ぐ)、めす(目す)、めづ(愛づ)、めむ(目む)、もる(目る)」
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ま(目)-まく(目く)-まくふ(目くふ)-まくはふ
-まくはる
-まぐふ(目ぐふ)-まぐはふ
-まぐはる
-まぐ(覓ぐ)-まぎる(覓ぎる)-まぎらす-まぎらせる「くにまぎ国覓」
-まぎらふ
-まぎれる
み(見)-みす(見す)-みさす(見さす)-みさせる-みさせらる-みさせらる-みさせられる「ま/め目、めみす睥*睇」「みそなはす〔ご覧になる〕」
-みせる(見せる)
-みゆ(見ゆ)-みyeる(見yeる)
~まみゆ(ま見ゆ)-まみyeる(マ接)
-みる(見る)-みらる(見らる)-みられる
-みれる(見れる)
む(見)~さむ(さ見)-さもる(さ見る)-さもらふ(サ接)
~まむ(ま見)-まむる(守むる)-まむらふ(マ接)
ぶ(見)~さぶ(さ見)-さぶる(さ見る)-さぶらふ(侍ふ)「さぶらひ(侍)」「さぶるこ(左夫流児)」(サ接)
め(目)-めぐ(愛ぐ)-めぐす(愛ぐす)〔情交〕
-めす(目す)-めさす(目さす)-めさせる-めさせらる
-めさる(目さる)-めされる(めす召)「きこしめす、しろしめす」
~しめす(し目す)-しめさす-しめさせる(示す)(シ接)
-しめさる-しめされる
~ためす(た目す)-ためさす-ためさせる(試す)(タ接)
-ためさる-ためされる
-めづ(愛づ)-めづる(愛づる)「めだし愛」「めづらし珍」
-めでる(愛でる)「めでたし目出度」
-めむ(目む)-めみす(目みす)「めみす(睇す)」
も(目)-もふ(守ふ)-もはる
-もゆ(守ゆ)
-もる(守る)-もらふ(目らふ)(守る-守らふ)
~まもる(目守る)-まもらす(守もる)(マ接)
~まもらふ
~まもらる
~みまもる(見守る)(ミ/マ接)
ぼ( )-ぼふ(目ふ)
-ぼる(目る)~まぼる(目守る)~まぼらふ
日国が紹介するように「もる(守る)」は「目る」と見る。この縁語群のもとになる音は渡り語「む/も//ぶ/ぼ」と考えられる。これら「見る」語群に対し、以下は「にる(睨る)」語群である。
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な(睨)-なむ(睨む)-なめる(睨める)「なめるなよ(ぢろぢろ見るな)」〔「なめ(無礼)」はない〕
に(睨)-にむ(睨む)
-にる(睨る)-にらむ(睨らむ)-にらます-にらませる
-にらまふ
-にらまる-にらまれる
ぬ(睨)-ぬす(盗す)-ぬすむ(盗すむ)-ぬすます-ぬすませる
-ぬすまふ
-ぬすまる-ぬすまれる
ね(睨)-ねむ(睨む)-ねまる(睨まる)
-ねめる(睨める)-ねめらる-ねめられる
-ねる(睨る)-ねらふ(狙らふ)-ねらはる-ねらはれる「wuかねらふ窺狙」
の(睨)-のず(覗ず)-のぞく(覗ぞく)-のぞかす-のぞかせる
-のぞかる-のぞかれる
-のぞむ(望ぞむ)-のぞます
-のぞまる-のぞまれる
和語には「め(目)、みる(見る)」絡みの語には、マ行動詞群のほかに、それとよく似たナ行語群が存在する。(m-n)相通語と考えられる。それらはマ行語とそっくり同じではなく、見る視点がやや異なる。
目で「見る」という動作であってもただ見るのではなく、さまざまな意図をもって見ることをこのナ行縁語群でもって言い分けている。敵意をもってみる、横目で見る、盗み見る、こっそり見る、じっと見つめる、遠くに視線を投げる、等々、場合によって自ずから見る姿勢も変わってくる。「ぬすむ(盗む)」の本意は「こっそり見る、盗み見る(窃視)」であって、窃盗行為は後の拡張と考えられる。二拍動詞「ねる(睨る)」はなければならないものであるが、今日に伝わらなかった。
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「ま/み/む/め/も(生*産*女)」
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ま(婚)-まく(婚く)-まかる(婚かる)「まくなぎ女管、めまく婚*女覓」
-まぐ(婚ぐ)-まぐふ(婚ぐふ)-まぐはふ
-まぐはる
み(身)「みぶ乳部、おみな/おうな老女*嫗*媼、いざなみ伊弉冉、かむろみ」
む(身)-むす(生す)「むすひ産霊、むすこ息子、むすめ娘」「こけむす(苔生す)」
~うむ(生む)-うます(生ます)-うまさす-うまさせる(ウ接)
-うまさる
-うませる-うませらる
-うまふ(生まふ)-うまはす「うまはし(利/利息)」
-うまはる
-うまる(生まる)-うまれる
-うむす(生むす)
-うめる(生める)
-うもす(生もす)
め(女)-めづ(女づ)-めでる(愛でる)-めでらる(愛づ)「め女*妻、めす雌、めだし愛、めのこ女子」
も(母)-もゆ(萌ゆ)-もやふ(萌やふ)「いも(妹)」
-もyeる(萌yeる)
-もよふ(萌よふ)-もよほす「(便意を)もよほす、雨もよひ」
和語の女性性、雌性に関する語はほとんど上記マ行渡り語で表現されていると見られる。
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「ま/み/む/も/ぼ(丸)語群」
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ま(丸)-まく(巻く)-まかす(巻かす)-まかせる-まかせらる(負かす)
-まかる(巻かる)-まかれる
-まくす(巻くす)「まくしかく捲掛」
-まくる(捲くる)-まくらる-まくられる
-まくれる(「めくる」はこれの異形か)
-まける(負ける)
~しまく(し巻く)(繞く)(シ接)
-まぐ(曲ぐ)-まがる(曲がる)
-まげる(曲げる)-まげらる-まげられる「まげ髷/枉/曲」
-まぐる(紛ぐる)「まぐれあたり」
-まごふ(紛ごふ)
-まず(混ず)-まざる(混ざる)
-まじふ(混じふ)-まじはる「あひまじふ相、ぬきまじふ貫、をりまじふ折」
-まじへる
-まじる(混じる)-まじらふ「いりまじる入混」
-まじろふ
-まぜる(混ぜる)-まぜらる-まぜられる
-まつ(纏つ)-まつふ(纏つふ)-まつはす-まつはせる(体に巻きつける)
-まつはる
-まつぶ(纏つぶ)-まつばる「かきまつぶ掻纏」
-まつべる
-まつむ(纏つむ)
-まとふ(纏とふ)-まとはす-まとはせる
-まとはる-まとはれる
-まとぶ(纏とぶ)
-まとむ(纏とむ)-まとまる
-まとめる-まとめらる-まとめられる
-まふ(舞ふ)-まはく(舞はく)-まはかす「ふるまふ振舞」
-まはす(舞はす)-まはさす-まはさせる(回す)
-まはさる-まはされる
-まはふ(舞はふ)
-まはる(廻はる)
-まる(丸る)-まるむ(丸るむ)-まるまる「まり毬」
-まるめる-まるめらる-まるめられる
-まろく(丸ろく)-まろかす
-まろかる
-まろぐ(丸ろぐ)-まろがす「ゆきまろげ雪丸」
-まろげる
-まろぶ(丸ろぶ)-まろばす「こyiまろぶ、ふしまろぶ」(転ぶ)
-まろむ(丸ろむ)
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み(廻)-みる(廻る)「いそみ磯廻」「かきみる、こぎみる漕廻、ゆきみる行廻」
び(廻)「いそび磯廻、かはび川廻、やまび山廻、をかび岡廻、wuねび畝傍、かむなび神備」
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む(廻)~たむ(た廻)「かきたむ掻廻、こぎたむ漕廻」「たば束/たま玉:たぶさ髻:たぼ髱」(タ接)
ぶ(廻)~たぶ(た廻)「たび旅、たび度」(タ接)
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め(廻)-めぐ(巡ぐ)-めぐる(巡ぐる)-めぐらす-めぐらせる
-めぐらふ
べ(廻*辺)「かはべ、はまべ、やまべ、をかべ」
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名詞 もと(本)-もとふ(廻とふ)-もとほる「廻とほる」
-もとる(悖とる)
もど(擬)-もどく(擬どく)「もどき擬/牴牾」「もどかし」
-もどす(戻どす)-もどさす-もどさせる
-もどさる-もどされる
-もどる(戻どる)-もどらす-もどらせる
-もどれる
「丸い」ことを言うマ行渡り語「ま/み/む/め/も//び/ぶ/べ(丸)」である。「たび旅」は、「たび度」と同語と見られ、「み/び(廻)」のタ接語で、「(あちこちを)ぐるぐる廻る」意であろう。
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「まく(任く/罷く)、まwu(参wu)」
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ま(設)-まく(任く)-まかす(設かす)-まかせる
-まかづ(任かづ)
-まかぬ(賄かぬ)-まかなふ〔時代別:あらかじめはかりまつ〕
-まかる(罷かる)「まかりぢ罷道、みまかる卒*死」
-まくる(罷くる)「さしまくる」
-まける
-まwu(参wu)-まわふ(参わふ)-まわへる「まゐたる参至〔まゐいたる?〕」
-まゐづ(詣ゐづ)
-まゐる(参ゐる)
-まwuく(設wuく)-まwuける「まwuけのきみ東宮」
-まwuす(申wuす)「いのりまwuす祈申、ささげまwuす捧申」
-まwuづ(参wuづ)-まwuでる
-まをす(申をす)-まをさる-まをされる「まをしあぐ申上」
この図は少し無理があるかも知れない。「まく任」「まく罷」「まwu参」の三つに分けると分かりやすいが、試みに大きな網をかぶせてみた。
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「まく(播く/蒔く/撒く)」
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ま( )-まく(播く)〔種をまく/播種、まき散らす〕「まきおほす播生;しきまき敷播*重播」
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「まく(設く)」
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ま( )-まく(設く)
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「まく(負く)」
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ま( )-まく(負く)-まかす(負かす)-まかさる-まかされる
-まかる(負かる)
-まける(負ける)(「値引く」は「押し、要求に負ける」意か)
これは「まく(巻く)」の項に組み込まれるとしたが、再検討のためにまとめておく。動詞図が「巻く」とよく重なり、意味の上からもそれなりに重なるが、さりとて「負く」と「巻く」が同語であるとするのもはばかられる。対語「かつ勝」との関係から見えてくるものはなさそうである。
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「まぐ(紛ぐ)、まがふ(紛がふ)」
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ま( )-まぐ(紛ぐ)-まがふ(紛がふ)-まがはす「まが曲/禍、まがこと悪事、まがたま勾玉、まがつひ」「まごまご」
-まがゆ(紛がゆ)-まがよふ
-まぎゆ(紛ぎゆ)
-まぎる(紛ぎる)-まぎらす
-まぎらふ-まぎらはす-まぎらはせる「まぎらはし(紛らはシ)」
-まぎれる
-まぐる(紛ぐる)「まぐれあたり」
-まごふ(紛ごふ)
「まが禍、まがこと悪事*枉、まがたま勾玉、まがつひ」
この語群は、(mg)縁語群をなしているようであるが、模写語「まごまご」由来の語か、「ま目+かふ交」のような複合語なのか、別項の「まぐ曲-まがる」や「まく/まぐ(覓ぐ・婚ぐ)」との関連など、いまのところ不明である。語の内容が後世的で複雑なので、これが孤立しているとは思えない。「目ぐ」か「曲ぐ」か、何かとひっつく可能性が高い。
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「ます(増す)、みつ(満つ)、もる(盛る)」
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ま(増)-ます(増す)-まさる(増さる、優る、勝る)
-まぬ(増ぬ)「まねし多」
み( )-みつ(満つ)-みたす(満たす)
-みちる(満ちる)
む( )~あむ(余む)-あます(余ます)(ア接)
-あまぬ(余ます)-あまねふ-あまねはす〔広く行き渡る〕「あまねし/さまねし多」
-あまねはる
-あまる(余ます)-あまらす-あまらせる
-あみす(浴ます)
-あむす(浴ます)
~あぶ(余ぶ)-あばく(余ばく)(浴ぶ)(ア接)
-あびす(浴びす)-あびせる
-あびる(浴びる)
-あぶく(余ぶく)
-あぶす(余ぶす)-あぶさふ
-あぶる(余ぶる)-あぶれる
~おむ(重む)-おもす(重もす)(オ接)
-おぼす(思ぼす)
-おもぬ(思もぬ)-おもねる(阿る/佞る)
-おもふ(思もふ)-おもはす-おもはせる-おもはせらる-おもはせられる
-おもはふ(m962/4389)
-おもはる-おもはれる
-おもふる
-おもほす
-おもほふ
-おもほゆ
-おもほる
~おぶ(溺ぶ)-おぼふ(溺ぼす)-おぼほす(オ接)
-おぼほゆ
-おぼほる
-おぼゆ(覚ぼゆ)-おぼyeる-おぼyeらる-おぼyeられる
-おぼる(溺ぼる)-おぼらす-おぼらせる
-おぼれる
~おぶ(溺ぶ)-おぼす(思ぼす)(オ接)
-おぼふ(溺ぼす)-おぼほす
-おぼほゆ
-おぼほる
-おぼゆ(覚ぼゆ)-おぼyeる-おぼyeらる-おぼyeられる
-おぼる(溺ぼる)-おぼらす-おぼらせる
-おぼれる
~まぶ(塗ぶ)-まぶす(塗ぶす)-まぶさる-まぶされる(マ接)
-まぶる(塗ぶる)-まぶれる
~まむ(塗む)-まみる(塗みる)-まみらす(マ接)
-まみれる「汗まみれ、糞まみれ、泥まみれ、血まみれ」
-まむす(塗むす)
-まむる(塗むる)
-まめす(塗めす)
-まめる(塗める)
も(重)-もふ(思ふ)「かたもひ片思」
も( )-もる(盛る)-もらす(盛らす)「もし茂シ」
-もらる(盛らる)-もられる
-もる(漏る)-もらす(漏らす)-もらさる-もらされる
-もらふ(漏らふ)-もらはる
-もれる(漏れる)
名詞 こは(壊 )-こはす(壊はす)-こはさる -こはされる(中世末以降の語)
-こはる(壊はる)-こはれる
こば(壊 )-こばす(壊ばす)
こほ(壊 )-こほす(壊ほす)
-こほつ(壊ほつ)(万1556、名義抄他)
-こほる(壊ほる)(万2644、仁徳紀4年、名義抄他)
こぼ(零ぼ)-こぼす(零ぼす)-こぼさす-こぼさせる(竹取物語他)
-こぼさる-こぼされる
-こぼつ(零ぼつ)-こぼたる(舒明紀10年、枕草子他)
-こぼる(零ぼる)-こぼれる「はこぼれ刃毀」
こわ(壊 )-こわす(壊わす)-こわさる -こわされる
-こわる(壊わる)-こわれる
こを(毀 )-こをつ(毀をつ)
-こをる(毀をる)
「ます(増す)」「みつ(満つ)」「もる(盛る)」のもとになるマ行渡り語「ま/み/む/め/も」及びその相通形「ば/び/ぶ/べ/ぼ」語群である。その心は、量や重さが増える、その結果一杯になり、やがて溢れる、重くなる、である。このリストについてはいささか説明が必要であるので、別途述べる予定である。
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「ます(坐す)」
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ま( )-ます(坐す)-まさふ(坐さふ)「まします」
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「ます(老成)」
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ま( )-ます(老成)-ませる(老成る)
「ます(増す)」と同語か。
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「まだ、みだ、もだ」
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名詞 まだ( )-まだら
まど( )-まどふ(惑どふ)-まどはす
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みだ( )-みだら
( )-みだり
みだ( )-みだく(乱だく)
( )-みだす(乱だす)-みださる-みだされる
( )-みだゆ(乱だゆ)
( )-みだる(乱だる)-みだれる「みだら、みだり、みだれ」
みど( )-みどろ
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もだ( )-もだゆ(悶だゆ)-もだyeる
もぢ( )-もぢり「すぢりもぢり」
もど( )-もどろ -もどろく-もどろかす「しどろもどろ」
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「まつ(待つ)」(mt)
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ま(間)-まつ(待つ)-またす(待たす)-またせる-またせらる-またせられる
-またふ(待たふ)
-またる(待たる)-またれる
日国によれば、「まつ(待つ)」を「間つ」とする見方には「マ(間)の活用語化〔国語溯原=大矢透・国語の語根とその分類=大島正健・大言海〕」説が見える。
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「まる/ばる(放る)」(mr/br)
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ま( )-まる(放る)(大小便ともに排泄する)「おまる」
-ばる(放る)「ゆまり/ゆばり」「ゆばりまる」
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● ● ≪みみみ≫ ● ●
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「みつる(羸つる)」
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み( )-みつ( )-みつる(羸つる)「m719/1967」(日国:やつれる、疲れはてる、病みつかれる)
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● ● ≪むむむ≫ ● ●
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「む/ぶ//も/ぼ(燃)、むす(蒸す)、むる(蒸る)、もす(燃す)、もゆ(燃ゆ)」
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む(燃)-むす(燃す)-むさす(蒸さす)-むさせる
-むさる(蒸さる)-むされる「むしむし」
-むせぶ(咽せぶ)
-むせる(咽せる)
-むる(燃る)-むらぐ(蒸らぐ)-むらがす(群る)「むら村」
-むらがる
-むらす(蒸らす)-むらさす-むらさせる
-むらさる-むらされる
-むらせる
-むれる(蒸れる、群れる)
~けむ(煙む)-けむす(煙むす)-けむさる-けむされる(ケ接)
-けむる(煙むる)-けむらす-けむらせる「けむり(煙)」
~とむ(灯む)-ともす(灯もす)-ともさる-ともされる(b-m相通形)(ト接)
-ともる(灯もる)
ぶ(燃)~あぶ(焙ぶ)-あぶす(焙ぶす)(ア接)
-あぶる(焙ぶる)-あぶらる-あぶられる「あぶら(油*脂)」
~いぶ(焙ぶ)-いびる(焙びる)-いびらる-いびられる(イ接)
-いぶす(燻ぶす)-いぶさる-いぶされる「いぶせし(鬱悒シ)」
-いぶせむ「いぶせみ(悒憤)」
-いぶる(燻ぶる)-いぶらる-いぶられる
~くぶ(燻ぶ)-くばす(燻ばす)(ク接)
-くばる(燻ばる)
-くぶす(燻ぶす)
-くべる(燻べる)-くべらる-くべられる
~くすぶ(燻すぶ)-くすぶる(クス接)
-くすべる
-くすぼる
~くすむ(燻すむ)
~ふすぶ(燻すぶ)-ふすぶる「ふすべ燻」(k-h相通形)(フス接)
-ふすべる
-ふすぼる
~けぶ(煙ぶ)-けぶす(煙ぶす)-けぶさる-けぶされる(ケ接)
-けぶる(煙ぶる)-けぶらす-けぶらせる
~すぶ(煤ぶ)〔大穴牟遅神に対して鼠が言った「内はほらほら、外はすぶすぶ」〕(ス接)
~とぶ(灯ぶ)-とぼす(灯ぼす)-とぼさる-とぼされる(ト接)
-とぼる(灯ぼる)
--
め(燃)「めらめら」
べ(燃)
--
も(燃)-もす(燃す)-もさす(燃さす)-もさせる
-もさる(燃さる)-もされる「もぐさ(艾*燃草)」
-もゆ(燃ゆ)-もやす(燃やす)-もやさる-もやされる
-もゆる(燃ゆる)
-もyeる(燃yeる)
ぼ(燃)-ぼゆ(燃ゆ)「ぼや(小火)」
--
本図のうち「むす」と「むる」は加熱をしても火炎を立てないので「もす」「もゆ」以下と区分すべきかもしれないが、マ行語として連続する面もあるので、便宜上ひとつとして扱う。
二拍動詞「むる」には上記のように「むらす/むれる」と「むらぐ-むらがる」のやや意味合いの異なるふたつの発展形がある。だが人が群れると蒸れるので、ここでは同語と見ておく。したがって、「むら村」は、散開した居住形態に対して、一か所に集まって住む集住形態を指していることになる。なおこの「む蒸」語は、後の「も燃」縁語群とひとつと見ることができるかも知れない。
ここでは燃焼を言う一拍語「も」をもとに、さまざまな接頭語をとることによって、見事な語彙体系を示している。人工語かと見まがうばかりである。和語の大きな特徴である。
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「むく(向く)」(mk)
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む(身)-むく(向く)-むかす(向かす)-むかせる「うつむく、そむく背向*叛」
-むかふ(向かふ)-むかはす-むかはせる
-むかへる-むかへらる-むかへられる(迎へる)
-むかる(向かる)
-むくふ(向くふ)-むくはる-むくはれる(報ふ)
-むくひる
-むくゆ(向くゆ)-むくyiる「むくyi(報yi)」
-むける(向ける)(平ける)
~そむく(そ向く)-そむかる(背向)(ソ接)
-そむける
~たむく(た向く)-たむかふ(手向)「たむけ手向/たむけくさ草」(タ接)
-たむける
~はむく(は向く)-はむかふ(歯向)(ハ接)
ぶ( )-ぶく(向く)~かぶく(か向く)-かぶける(傾く)(カ接)
~かぶす(か向す)(傾す)
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「むく(剥く)、むぐ(剥ぐ)、めぐ(壊ぐ)、もぐ(捥ぐ)」(mk/mg)
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む( )-むく(剥く)-むかす(剥かす)-むかせる
-むかる(剥かる)-むかれる
-むくる(剥くる)-むくれる
-むける(剥ける)
-むぐ(剥ぐ)-むぐる(剥ぐる)
-むす(毟す)-むしる(毟しる)
め( )-めぐ(壊ぐ)-めげる(壊げる)
も( )-もぐ(捥ぐ)-もがる(捥がる)-もがれる
-もげる(捥げる)
-もる(捥る)
ぼ( )-ぼる(捥る)「暴利をぼる/(ムサ接)むさぼる」(m-b相通形)
「むしる毟」については、「むす」を想定し、ここに置いておく。
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「むつ(睦つ)」
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む( )-むつ(睦つ)-むつぶ(睦つぶ)
-むつむ(睦つむ)「むつまし/むつまじ」
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「むつ(憤つ)」
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む( )-むつ(憤つ)-むつく(憤つく)-むつかる「むつかし難」
-むつくる
-むつける
-むづく(憤づく)-むづかる「むづかし難」
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● ● ≪めめめ≫ ● ●
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「める(減る)」
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め( )-める(減る)(「かる(上る)」の対語)
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● ● ≪ももも≫ ● ●
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「もぐる(潜る)」
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も( )-もぐ( )-もぐる(潜ぐる)
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「もだ(黙)」(md)
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名詞 もだ(黙)-もだす(黙だす)〔黙っている〕
-もだふ(悶だふ)-もだへる
-もだゆ(悶だゆ)-もだyeる〔口に出さず悩む〕
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「もつ(持つ)」(mt)
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も( )-もつ(持つ)-もたぐ(擡たぐ)-もたげる
-もたす(持たす)-もたせる-もたせらる-もたせられる
-もたる(凭たる)-もたらす-もたらせる(齎す)
-もたらふ
-もたれる
-もてる(持てる)
-もちふ(用ちふ)-もちひる-もちひらる-もちひられる
-もちゆ(用ちゆ)-もちyiる
-もちwu(用ちwu)-もちゐる
~たもつ(た持つ)-たもたす-たもたせる(保つ)(タ接)
-たもたる-たもたれる
-もる(持る)-もらふ(貰らふ)-もらはる-もらはれる
「も」は「身」か、「も(接頭語)+つ(手)」か。
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「もと(本)」(mt)
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名詞 もと(本)-もとる(悖とる)
もど(擬)-もどく(擬どく)「もどき擬/牴牾」「もどかし」
-もどす(戻どす)-もどさす-もどさせる
-もどさる-もどされる
-もどる(戻どる)-もどらす-もどらせる
-もどれる
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「もむ(揉む)」(mm)
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も( )-もむ(揉む)-もます(揉ます)-もまさる-もまされる ≪もみもみ≫
-もませる-もませらる
-もまる(揉まる)-もまれる
-もみつ(揉みつ)-もみたす「もみち紅葉」
-もみたふ
-もみづ(揉みづ)-もみづる「もみぢ紅葉」
-もめる(揉める)
「も」は「身」か。
◆------------
完
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