原始の日本人は「くろ(黒)」という色にはものごとのよくない面を重ねたようである。と言うより「く」という音に嫌なもの、よくない思いを乗せたであろう。「腹黒い」が典型である。和語において音と意味の関係を考える上でのひとつの鍵である。
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く(黒)-くす(腐す)-くさす(腐さす)「くそ(糞)」
-くさる(腐さる)
-くつ(朽つ)-くたす(朽たす)「くたくた、くたばる」
-くたる(朽たる)
-くちる(朽ちる)
-くづ(砕づ)-くだく(砕だく)
-くだす(砕だす)
-くぢく(砕ぢく)「くぢく(挫く)」
-くづす(崩づす)「くづ(屑)」
-くる(黒る)-くらす(暮らす)「夜を明かす、日を暮らす」「くろ黒」
-くらむ(暗らむ)「眩む」
-くれる(暮れる)
-くろむ(黒ろむ)「くろずむ」
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上の語のほか「くるし(苦)-くるしむ」も一連の「く」語と考えられる。
琉球語には「くるー(黒)、くるさん(黒い)」がある。
アイヌ語では一般的に「くんね」という形で”黒い、暗い”を表している。「くろ」は「えくろく(顔色が暗い)」「しれくろく(辺りが暗い)」などに残っている。
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| 和語 | 琉球・沖縄語 | アイヌ語 |
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黒 |くらし、くろし |くるー、くるさん |くんね、くろ |
新・白 |さ/さら、し/しろ |さ/さら、し/しるー、し/しろさん|し/あしり(新しい) |
名・名前 |な(音) |なー |れ〔「ね音」の(n-r)相通形〕 |
花(ナ行語)|のんの |のーのー |のんの |
宣告 |のる、のり、のりと祝詞|のろ、ぬる、ぬーる、いぬゆん|のみ |
花(ハ行語)|はな |はな |あぱっぽ、えぷい、(ぴらさ、へちらさ)|
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