日本の山野に見られる大型の動物と言えば「か/しか/かのしし(鹿)」、「くま(熊)」、「ゐ/ゐのしし(猪)」くらいであろうが、我々の祖先がこの地に上陸したときこれらは目の前を駆けまわっていたのだろうか。後にどれも重要な食糧となった。そのときわが祖先はそれを何と呼んだのか。
空想はおいて、ここでは「か(鹿)」であり、「ゐ(猪)」である。この名は始原的であり、全土に通用したであろう。
| 和語 | 琉球・沖縄語 | アイヌ語 |
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鹿 |か、しか、かのしし |こーぬしし(このしし/鹿) |ゆく(鹿)、あぷか(雄鹿)|
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わ | |わー(豚) | |
ゐ猪 |ゐ、ゐぬ、ゐのしし | | |
ゑ |ゑぬ(犬) | |せた(犬) |
”鹿”は、和語では「か」、琉球語では「こ」、アイヌ語では「か/く」とカ行渡り語「か、く、こ」で捉えられている。
”猪”系のワ行語動物名であるが、琉球語の”豚”を言う「わー」、アイヌ語の”犬”を言う「せた」が注目される。特に「せた」が「ゑぬ(犬)」の「ゑ」が(w-s)相通化したものと見られるところが興味深い。