「さむい(寒い)」「つめたい(冷たい)」(013)

 

 

 アイヌ語に”寒さ、冷たさ”を意味する一拍語「め」がある。この語はそれだけでは使われず、「めあん(寒い)」「めらいけ(寒い)」の形で使われる。特に「めらいけ」は「め(寒さ)+らいけ(殺す)」という構成で耐え難い”酷寒”を言うように思うがごく普通の「寒い」意であるという。”寒い、冷たい”意の語はこの「め」のほか「ま」「み」「む」に渡ってマ行渡り語を作っている。

 

 同様のマ行渡り語の存在は和語でも認められる。”寒さ、冷たさ”をもつマ行語はすべて何らかの意味をもつ「さ」や「つ」の前接語をとっている。

 

 ところが琉球語では南国らしくばらばらである。ここではマ行語の前身に当たるハ行語がまだ生きている。原始日本語には”寒さ、冷たさ”を言うハ行渡り語が存在していたはずであるが、それが時代の経過につれてバ行語となり、次いでマ行となって今日に生きていると考えられる。しかし、ハ行語は「ひ-ひゆ-ひやす/ひyeる」と”冬”の「ふ」しか残っていない。それが使われている。

 

     |   和語       |   琉球・沖縄語     |   アイヌ語        |

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 ひ   |ひ、ひゆ、ひやす、ひyeる|ひーさん、ひじゅるさん   |               |

 ふ   |ふゆ(冬)       |ふゆ            |               |

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 ま   |さます(冷ます)    |さますん          |また(冬)          |

 み   |さみし、さびし(淋し) |さびさん          |みしむ(淋し)        |

 む   |さむし、さぶし(寒し) |(ひーさん)        |なむ、なむか、なむて(冷やす)|

 め   |さめる(冷める)    |さまいん          |めあん、めらいけ(寒し)   |

     |つめたし(冷たし)   |(ひじゅるさん)      |--             |

 も   |さもし         |--            |--             |

 

 

 ここで注意しなければならないのは、「め」を始めとする”寒い、冷たい”を表す語がアイヌ語から和語や琉球語に流入したわけではないということである。これらの語は原始日本語に存在した語であって、和語、琉球語、アイヌ語はそれを同じように受け継いで今日に至ったということである。

 

(つづく)