「きる(着る)」(025)

 

 さきに「さむい」「つめたい」の項でアイヌ語の”寒い”意の「めあん、めらいけ」などマ行語をとり上げたが、おそらくこれと同語と思われる寒さを防御するための”着る”意のマ行縁語群がある。「ま(着る)」「み(着る)」である。

 

 

    |  和語     |  琉球・沖縄語    |  アイヌ語          |     |

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 着る |きる(着る)   |            |              |    |

 ま  |はかま袴、ふすま衾|            |ま(着る)         |    |

 み  |み箕       |            |み(着る)、あみぷ(着物) |    |

 む  |         |            |むい(箕)         |    |

 め  |あこめ衵     |            |              |    |

 も  |ころも衣(躯裳) |            |              |    |

 

 これによって和語の上記「はかま、ふすま、あこめ、ころも」の語意がすっきりした。ただし「あこめ」の「あこ」は不詳である。

 

 問題は和語の「きる(着る)」で、この語の由来と「まる、みる(着る)」を押しのけて”着る”の位置を占めた経緯が謎として残る。

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か(着)-かる(着る)

き(着)-きす(着す)-きせる(着せる)

    -きる(着る)

け(着)-けす(着す)「みけし(御衣)」

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