「鹿」と「熊」(038)

 

    |   和語      |   琉球・沖縄語      |   アイヌ語      |

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 鹿  |か、しか、かのしし  |しか、こーぬしし(このしし) |ゆく(鹿)、あぷか(雄鹿)|(ka/ku/ko)

 熊  |くま、        |くま             |かむい(熊)、きむん、くま|(ka/ki/ku)

 

 ここでの話題は、動物のうち日本人ともっとも縁の深い大型動物の”鹿”と”熊”の名前である。これらがいなければ日本人が今日まで日を暮らすことができたかどうか。身近であるがゆえであろう、その名前は極めて簡明で、原始日本語の時代はどちらもカ行渡り語のひとつ「か、き、く、け、こ」のどれかで表されていたと考えられる。時代が経過するにつれて、琉球、本州、北方地域と別れてカ行一拍語の前後に接辞をつけてより個別的に指すようになった。

 

 熊についてはおそらく早い時期にカ行一拍語がマ行拍をとって、「km」語になったであろう。中でも「くま」が一般的になった。特にアイヌ語では「熊」と「神」が偶然重なったか、わざと重ねたかはともかく同語となっている。アイヌ語における「熊」と「神」の物語には膨大なものがあることが知られている。

 

 動物を呼ぶカ行一拍語は、鹿と熊だけではなく、「wuさぎ/をさぎ(兎)」、アイヌ語の「もゆく(狸/貉)」などもあり、そのほか「か/きー/け(毛)(「きー」は琉球語)」「かは(皮)」、アイヌ語「かむ(肉)」などもあって、原始日本語の中で動物をめぐって一定の位置を占めていたと考えられる。

 

以上