「ある、いる、おる(存在)」 (048)

 

 

   |  和語        |  琉球・沖縄語    |  アイヌ語       |

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 わ |わる/ある(有る)    |あん(有る)      |あん(有る、居る)    |(w-&)

 ゐ |ゐる/いる(居る)    |            |             |(w-&)

 wu |            |うん(居る)      |うん(有る、居る)    |(w-&)

 ゑ |--          |--           |--           |

 を |をる/おる(居る)    |            |おか、おま(有る、居る) |(w-&)

 

 

 上の図は、日本語において人や動物などの生物、石や木のような非生物の”存在”を言う語について、古今、各地の状況を極めて簡略に示したものである。原始日本語では一拍語のワ行の渡り語「わ、ゐ、wu、を」によって今日の「ある、いる、おる」を表現していた。それを左端の列に示している。その「わ、ゐ、wu、を」が和語、琉球語、アイヌ語に分化することによってそれぞれ「ある、いる、おる」「あん、うん」「あん、うん」と変化した。ワ行語のうち「ゑ(we)」については、これが存在を示す語であった痕跡は今のところ見つかっていない。

 

 図に見るように”存在”を言うワ行一拍語{わ、ゐ、wu、を」は、和語ではア行一拍語に転じ、同時に一拍語の安定化要素、また動詞語尾として「る」をとって長語化した。一方琉球語とアイヌ語では「ん」をとって長語化した。ひとつの日本語としての見事な統一性を見せている。アイヌ語における上記「おか、おま」やその他類似の「お」語については別に議論が必要であろう。

 

 ワ行一拍語「わ、ゐ、wu、を」は、単に人や物が「いる、ある」という”存在”を表すだけではなく、人や物が存在するためにはその前に生まれること、即ち誕生、生産、生成がなければならず、その誕生、生成をも意味し、さらにそれに付随する意味の語を縁語として含んでいる。

 

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わ/あ(生)-あす(生す)-あさす(生さす)

      -ある(生る)-あらす(生らす)-あらせる

      -ある(有る)-あらす(有らす)-あらせる

      -ある(露る)-あらふ(露らふ)-あらはす-あらはせる「表はす」

                      -あらはる-あらはれる「現はる」

      -ある(新る)-あらく(新らく)

             -あらふ(新らふ)「洗らふ」

      -ある(荒る)-あらす(荒らす)-あらさる-あらされる

             -あらぶ(荒らぶ)

             -あれる(荒れる)

ゐ/い( )-いる(居る)

を/お( )-おく(居く)「置いて居く」

      -おる(居る)-おらす(居らす)-おらせる

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 なお二拍動詞「うむ(生む)」は、ここで取り上げたワ行語ではなく、「ます(増す)」などとともにマ行縁語群の語であるので別に扱う。

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以上